3/2(土)「本当のところ起業ってどうなの?東大女子起業家の現実と東大の起業支援の取り組み」開催報告

2024年3月2日(土)午後8時〜10時(日本時間)
「本当のところ起業ってどうなの?東大女子起業家の現実と東大の起業支援の取り組み」をテーマに、イベントを開催しました。

今回は、東大IPCさんと、株式会社アークコミュニケーションズ代表取締役の大里真理子さんと、株式会社キビテク代表取締役の林まりかさんをプレゼンターにお招きしました。

●テーマ
「本当のところ起業ってどうなの?東大女子起業家の現実と東大の起業支援の取り組み」


●講師
・大里 真理子(おおさと まりこ)さん

株式会社アークコミュニケーションズ代表取締役。

1982年理2入学、1986年文学部卒。1992年ケロッグビジネススクール卒。日本アイ・ビー・エム、ユニデン、アイディーエスにてグローバルビジネスや新規事業立上に従事。

「Communicate Locally, Market Globally」をコンセプトに、ビジネスコミュニケーションをサポートするアークコミュニケーションズを設立。翻訳・通訳事業、Web & Cross Media事業、派遣・紹介事業を展開。

パンチ工業(株)や(株)日本M&AセンターHDの社外取締役、さつき会・東大校友会幹事等。

・林 まりか(はやし まりか)さん

東京大学JSK(人型ロボットの研究室)にて博士号取得。大手メーカー研究所勤務を経て11年創業。現在、株式会社キビテク代表取締役CEO。10年度IPA(情報技術推進機構)未踏スーパークリエータに認定。

ロボット・AI用遠隔制御サービスHATS事業、知能ロボットのSI事業に取り組む。途上国等へ就業機会を提供し機会均等化から格差問題に挑戦中。人力補完技術の世界No1企業を目指しています!

●東大IPCとは

東京大学協創プラットフォーム開発株式会社(東大IPC)は、2016年に東京大学が100%資本を持つ投資事業会社として設立。投資事業、起業支援、DeepTech DIVEの3つの事業を通じて、東京大学周辺のイノベーションエコシステムの発展を目指す。

●イベントの概要

まず東大IPC小澤さんから、起業に関する日本の現状や、東大IPCの起業支援のご紹介をいただきました。

実は2022年度までに、東大関連のベンチャーは526社誕生しており、そのうち累計26社が上場しています。東大IPCが設立したのは2016年ですが、その前から東大はさまざまなベンチャー育成の取り組みをしてきており、この数字はその取り組みの積み重ねの成果と言えます。東大IPCは、教育領域でのアントレプレナーマインドの醸成から、起業支援・成長支援までトータルに支援する体制を構築しており、興味がある方はいつでも歓迎とのこと。

続いて林さんから、ご自身の起業のきっかけのお話を聞きました。

大学時代はロボット部に所属、また就職後は本業だけでなく、プライベートの時間でも機械を作るほど、メカがとても好きだったそう。起業のきっかけは、そのプライベートの時間でやっていた事業がIPA未踏事業へ採択されたことです。この未踏メンバーで一緒に働きたい、もっと製品企画の全体をやりたいと思われたそうです。また、当時のメンターの石黒先生の言葉もきっかけとなり、起業を決意されたそうです。

「ロボ技術で就労機会の均等化への貢献を目指す」をミッションとしたキビテクを創業。創業初期は、知能ロボットの開発受託やロボット等製造販売を行っていました。今はロボット用の遠隔制御サービスを自社事業として行っています。

出産を機に、ニュースを見るようになったり、子供に話をする機会が増えたりすることで、社会の問題と格差に関心を持ったそうです。そして、便利なことをより便利に、ではなく、より困っている人のためになることに、ロボットの技術を活かしたいと思うようになり、ご自身のされたいことがより明確になったそうです。やりたいことが明確になる前は、エンジニアの方とのコミュニケーションや、事業の方向性に悩むことが多かったそうですが、やりたいことが明確になった後は、資金調達や経営陣を含めたメンバー集めがうまくいくようになったそうです。

起業のやりがいは、自分が作った事業構想に賛同して、一緒に動いてくださる人が集まってきてくれること。また、全力で取り組めることがあること、日々新たな壁に取り組んでいくのも楽しいそうです。

また大里さんから、起業のぶっちゃけ話を聞きました。

起業が身近になった背景は、日本IBM(株)に新卒入社したときに「社長になりたい」と言ったのがきっかけで、ケロッグビジネススクールで学び、起業の選択肢があることを知ったことだそうです。転職先のユニデン(株)での事業立ち上げを機に、起業が身近になったとのこと。再度転職を考えていたときに、上司に誘われたご縁で、起業を決められたそうです。「お客様の思いや本質を、わかりやすく世界に伝える」をミッションに、(株)アークコミュニケーションズの代表をしておられます。

起業のリスクは、①会社の相続率が低い、②世間の信用が得にくい、③知名度がなく社員の採用が難しい、ことといいます。またここで付け加えたいのが、ベンチャーはリスクを積極的に取るものだと思われがちですが、成功した経営者はいかにリスクを低くするかに長けていること。

最後に、その起業は本当に必要ですか?と参加者に問いかける大里さん。起業は①環境を作るのが大変②出資してもらうと、自分の思うようにできない③やめるのが大変、これが現実です。

起業するなら、何を得たいのかの最低ラインを引く、失敗した時のボトムラインを想定する、自分を過大評価して楽観的になる、ことが大切だといいます。

多くの場合取り上げられる起業理由は、やりたいことが従来の枠組みではできない、という理由ですが、実際は、社長になりたい!縁があって気づけば!という理由も多いそうです。起業理由に貴賎はないので、理由にこだわらず、楽しく起業をしてください、というメッセージをいただきました!

起業についての全体像のお話から、起業についての具体的な体験談をお聞きできるとても貴重な機会でした。ここからは個人的な感想になるのですが、起業をされている方のお話を聞いていると、すごくパッションを感じ、またそのようなパッションを持って生きておられる方は素敵だなと思いました。また、スピーカーの方が、さまざまな経験をされた後に、起業という選択肢をされているのだと驚きました。自分のパッションを大切に、人や社会を巻き込み、覚悟を持って事業を推進していく、それが起業なのかなと感じました。

イベントの全体写真